FC2ブログ

【Column】蛇崩と丸の人。

「向いててぇ。」
これは「丸の人」で絵描きがつぶやいたセリフですが、
実は、KKPを観たことがある人にとっては初耳ではないんですよね。
雰囲気が全然違ったのでこれまでリンクしなかったのですが、
Sweet7では片桐さんのセリフに割り当てられていました。
ラーメンズはフルコースだし、根津カフェやエレ片はデザートだし・・・
という小腹の空いた状態に見事にハマった、Sweet7。
無理やり例えれば、お雑炊とか・・・?
具だくさんでおいしかったです。おなかにやさしかったです。

Sweet7で主演した片桐さんは、
『ケーキ以外のものなら何でも上手く作れるパティシエ』
という役どころ。
同じセリフを言ってるなーと気付いたとたん、
『丸を描こうとすると必ず逆境に立たされる絵描き』に
似た匂いがしはじめました。
一番やりたいことに、とことん向いてない人。
ダメじゃんそれ、っていう。
大げさに言っちゃうと救いがない感じです。
賢太郎さんの生み出すキャラクターってこういう人多いかもしれませんね。
このモチーフってどこから持ってくるのでしょう。
賢太郎さんは自分のことをこんな風に思っているの?
と憶測するのは危険だと自覚してるのですが
(賢太郎さんはエンターテイナーだと思うので)、
ポツネン2作を観終わってからは、そう感じるのもアリかなと思ってます
(同時に表現者だとも思うので)。

さてこの二人、同じように「向いててぇ。」という言葉を吐き出すのですが、
真逆なほど違う描かれ方をした二人、ひいては作品だと思うんです。
少なくとも私は、同じセリフがあったことさえ繋がらなかったくらいです。

片桐さん演じる蛇崩(ジャクズレ)は、
発泡スチロールや切り株でケーキの形を作るのは上手なのに、
本物のケーキを作ろうとすると形になりません。
自分がパティシエに向いてないことを分かってるのですが、
あきらめ切れずに、陽気な渋い顔でこう言います。
「向いててぇ!」
でもこの蛇崩さん、実は100万人に1人の才能を持ったすごいパティシエだったのです。
ケーキを一口食べただけで、味を完全に再現できるんですって。
形はスライムみたいになっちゃいますけど。
物語は彼が自分の才能に気付かないまま終わりますが、
となりにいた牛乳屋さんが彼の才能に気付くことで、
主人公の未来に光が与えられている印象を受けます。
彼はその才能を活かして大活躍するかもしれないし、
これまでと同じような結構楽しい日々を仲間達と過ごしていくのかもしれません。

蛇崩には才能があったという情報を与えることで、
観る側が想像する彼の未来がなんとなくハッピーな方向に集約されるのは、
完全に作家さんの策なのでしょう。
ただ、この策はおそらくそんなに真新しいものではないので、
良くも悪くも絶賛や拒絶のない「おなかにやさしい」作品と、
白パンをして思わせるのです。
好きなところいっぱいあるんで、めちゃくちゃ観てますけど。


一方、「丸の人」の絵描きは、丸の絵ばかり描く貧乏画家です。
しかも、実物を見ながらじゃないと描けないようです。
なけなしのお金で絵の道具と描く対象を買っても、
いつもトラブルが起きて、描く段階までに一苦労です。
今回の題材は白くて大きい丸。
雪だるまを見て描こうとしますが、天気予報が外れて雪が降りません。
そんな彼が、蛇崩と同じように「向いてないんだよ」と言われて、
気持ちが溢れたかのようにこうつぶやきます。
「向いててぇ。」
そしてここからが違うのですが、彼には本当に才能がなくて、本当に向いてないのです。
その事実を目の当たりにした絵描きの心に、
計らずも白くて大きい丸がぽっかりとできました。
今まで描いた中で一番綺麗で大きな丸です。
彼は、うれしいのか悲しいのか分からない顔で微笑むと、
やっと休める、と言って眠りにつきます。
私自身は、絵描きは死んだのだという具体的な感想は持たなかったのですが、
彼はもう目を開けることはないかもしれないということと、
次があればもっと楽な気持ちで絵が描けるだろうということを直感しました。
正直まだよく分かってない気がしてます。

ただこの作品が、観た人分の解釈を受け止めてくれる深みを持っていることは分かります。
絶賛する人も、拒絶する人もいるんじゃないでしょうか。
少なくとも、おなかにやさしくはないです。
それは作家さんが、才能のない絵描きというキャラクターに
安易に光を与えなかったからだと思います。
闇を光でごまかさずに、闇のまま取り出して対峙する。
物語は簡単には進みませんが、そうすることで小林賢太郎にしか出来ない世界が生まれ、
その真摯さに多くの人が、この絵描きは小林賢太郎自身だと感じたのではないでしょうか。

もうちょっと憶測すると、「丸の人」というゴール地点を設定しえたからこそ、
救いのない人がいっぱい出てくるポツネン2作を
発表できたように感じられます。
逆に言えばSweet7の時点では、
「一番やりたいことに、とことん向いてない人」
というモチーフしか使えなかったのではないでしょうか。
ハッピーエンドの話を作るという意図のもとであれば、
そのモチーフしか「使わなかった」とも言えるでしょうが。


「向いててぇ」という言葉を吐き出した二人のキャラクターの間に、
賢太郎さんの思考の軌跡の一端を見た気がします。
そして現在公演中のTEXT。
ポツネン以降の賢太郎さんが、心強い相方さんと、
すごい勢いで輝いているのを私は見ました。

The Japanese Society of Rahmensiology

スポンサーサイト



エレ片生放送。

2/2 27:00からのコント太郎。
TEXT始まったばかりだし、収録だろうなーと思ってました。
すごいなあ片桐さん。当然なのかもしれないけど、プロなんですね。
こちとら、会場の外で片桐さんと遭遇したような気分でしたよ。
本番を終えて間もない片桐さんは、
何だかいつもとちょっと違った空気を纏っているようで。
高揚感と疲労感入り混じったテンションで、
いつもより余計笑ってたように聞こえました。
っていうか、面白かったー!
谷井さんと今立さんに「(公演コントの)面白い言葉だけ教えて」とか言われて、
「バカじゃねえの?!」って怒るの、よかったなあ。
エレキと片桐さんの仲の良さと、
片桐さんがいかにラーメンズを大事に思ってるかが
すごく伝わってきました。

片桐さんTEXTについて曰く。
面白い所を抽出することはできない、と。
一部分だけ切り取ったら面白くない言葉が、
文脈の中ですごく輝くことがある、と。


textの派生語にcontext(前後関係、文脈)というのがあって、
タイトルが発表になってすぐ調べた覚えがあります。
接頭語のcon-(もとはcom-)は、「共に、一緒に」という意味を持つのですが、
賢太郎さんと片桐さんが「共に」TEXTを駆使して輝かせるのだなあと思っちゃいました。


強い言葉と、賢太郎さん

Potsunen感想その1。

「ジョンと私」でジョンを捨てに森へ来た男が、「大好きなんだよ。」と嘆いたこと。
「タングラムの壁」で悪魔が、「寂しいな。」とつぶやいたこと。
賢太郎さんから放たれたそれらの言葉の輪郭は思いの外はっきりしていて、すとんっとこちらに届いてきました。
強い言葉だなあって感じたんです。
今まで賢太郎さんて、こんな風にストレートに感情をセリフにしたことなかったんじゃないかなって。
もし同じセリフがラーメンズのコントにあったら、違う意味と響きを持って放たれてきた気がするんです。意味が逆になってたり、二重になってたり。
それか、同じことを言うにも、この二つみたいに強い印象を与える言葉じゃなく、日常にありふれた言葉を使って、コント全体からその感情を表現する方法を取ってきたように思うんです。

私の大好きなコントの一つ、「アトムより」はまさにそう見えます。
映画監督トガシくんと、話し方がちょっと変なノス。二人は仲良し。
ノスはトガシくんとトガシくんの作品が大好きで、一緒にいろんな所に行きたくてうずうずしています。
トガシくんは、これまで何度もそうしてきたように、今日もテンション高めで遊びまくるノスを軽く戒めつつ、あたたかい目で見つめています。
けれど二人で出かけようとしているうちに、ノスは動きを止めてしまいます。
トガシくんは、そんなノスを見て軽くため息ひとつ。
寂しさや孤独を胸の奥にしまい込んだような顔で、またかよっていう諦めと苦笑の顔で、こう言います。
「バッテリー、あったかなあ。」
暗転。

・・・なんだかこのコントに浸ってしまいそうなので話を戻します。
大好きって言わなくても、寂しいって言わなくても、二人の関係性を描くことで、その気持ちを表現することはできる。
ラーメンズで賢太郎さんはずっと、関係を描いてきました。

でもPotsunenはどうやら違うようです。
名前の通り、独りの小林賢太郎さん自身を描こうとしているのだと思いました。
ここから描いていくのは、誰かと誰かの関係じゃない。
もう一歩踏み込んでるから、今まで使わなかった強い言葉をぽろっと使えちゃうのかなって思うんです。
描きたいことはもっと奥に、自分のもっと奥にあるのかなって。

「ジョンと私」はPotsunenの始まりとして、とても綺麗だと思います。
独りであるという決意表明と問題提起。
誰かと誰かの関係を描いてはいない。
だから、ジョンと私とは、他人じゃないんですね。
飼ってるうちにどんどん大きくなってしまったジョン。
捨てに来たけど大好きだから出来ないジョン。
本当は飼われていたのは僕なのか?ジョン。
レッスンプロゴルファー、ジョン。(関係なし)

賢太郎さんの格好をした、そのジョンって一体何?誰?


心ある方々の真摯なポツネン評を見つけるたびに、導き出された答えとその軌跡を見て興んでいます。
それはコントである。それはコント発生装置である。
面白いです。こんなに真剣に書いてる人たちがいるのも、無い頭をひねって自分がこんなに考えてるのも。
私はまだ頭の中がごちゃっとしてるので、もう少し。
美しくも孤独なPotsunenの世界で漂ってようと思います。






カレンダー

01 | 2007/02 | 03
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 - - -

プロフィール

白パン

Author:白パン
ライブ・舞台の観賞日記です。フォローしているのはキリンジ、ラーメンズ(小林賢太郎)。東北芸術工科大学デザイン工学部在学中。

BlogPet

ブログ内検索

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文: